20年ほど前の話。東京の西部で一人暮らしをしていた私のもとへ、母が訪ねてきました。母を迎えに行った駅前で、ウズラの雛を売るおじさんに出会ったのです。

正確には、ウズラではなく、ウズラと何かを掛け合わせたもの、と言っていた気がします。ヒヨコよりずっと小さく、大きさは3センチ弱。ヨチヨチ歩く様子がかわいらしく、母が帰るときに実家に連れていくからと、2匹買うことにしました。

「茶色いのがオス、黄色いのがメス」とおじさんは言いました。茶色も黄色もたくさんおり、はっきりと見分けがつきました。茶と黄を一匹ずつ買って帰りました。

チョキの形にした指を、床の上を歩くように動かすと、「後追い」をしてくる姿がとても可愛らしかったです。しかし、黄色いほうは、明らかに動きが弱々しく頼りなさげ。

2匹とともに実家に戻った母からの報告で、黄色いほうがまもなく死んだことを知りました。半年後、久しぶりに実家に帰ってみると、立派なウズラに成長した茶色くんの姿がありました。

両手の中に収まりきらないほど大きくなり、爪も鋭く、くちばしでつつかれると痛かったです。そしてこの茶色くん、タマゴを生んだのです!律儀に毎日ひとつずつ、食材を提供してくれました。

家の中やベランダで見つけたクモや青虫を、活き餌として与えた翌日のタマゴは、どうも食べる気がしませんでしたが。

ちなみに、東京の某駅前でウズラ売りのおじさんを見たのは、あの日が最初で最後。私はあの時のおじさんに言いたいのです。「茶色は雌ですよ!」と。