私の父は、田舎の建築職人でいろんな個人宅へ行っていました。
昭和の時代でしたので、お金が払えない人から家財や、ある時は車を買い取ることもありました。

いらない物をもらってくる事も多く母と喧嘩になっていたのですが、ある日、飼い犬が子犬を生んで面倒見切れないと少し大きくなった雑種の子犬をもらい受けてきました。

白い体毛で顔周りの毛が長く、ヨークシャテリアのような顔をしていました。
姉妹3人はとても喜び可愛がりました。

屋外で飼っていたのですが、現在の様に、家族の様に可愛がるとか、躾をすると言う事もなく、できたのはお手とお座りくらいでした。

散歩に行くのが楽しく、姉妹で誰が今日はリードを持つかよくケンカになったものでした。

小次郎が我が家に来てしばらくしてから、小次郎が夜中になるとよく吠えるようになりました。

父は、近所迷惑になると自分が小次郎の相手をする事が面倒臭いという事もあり、吠え出すとリードを離すようになり、小次郎は、朝になると帰ってきてご飯を食べるという事が日課になりました。

日中は犬小屋でおとなしくいるのですが、夜泣きをする赤ちゃんのように毎晩繰り返され、ある日を境に小次郎は帰ってこなくなりました。

姉妹で学校が終わると周辺の地域を探したり、子供ながらに小次郎の絵を描き生徒に配ったりと探していましたが、誰も見たこともなく私達姉妹は、ご飯が食べれているのか、むしろ、もう野垂れ死んでいるのではないかと思う日が続きました。

半年程経ったころ、スポーツ少年団でバレーボールをしている同級生から、他小学校の試合に行った際、小次郎に似た犬を見たと教えてくれる同級生がいました。

ですが、その小学校は、車で走っても30分はかかるところにあります。
私は、家族に話しながらもよく似た犬だろうと思っていましたが、何人も、間違いないと言うので父にその小学校まで行ってもらう事になりました。

父が運転する仕事用のトラックに乗りその小学校へ行きましたが、運動場には小次郎らしき犬はおらず、父が、先生であろう人に尋ねたら、犬は学校で飼っているとのことでした。

学校の玄関先に確認させてほしいと歩いていくと、生徒達の笑い声やにぎやかな声が聞こえてきました。
小さな集団の中にいる犬は、まさしく小次郎でした。

私たちは、小次郎だと確信したのですが、小次郎は対して私達に興味もなく、生徒達と遊ぶ方が楽しそうに見えました。

言葉にする事はありませんでしたが、小次郎は間違いなく、目はキラキラしており、しっぽをふり楽しそうにしています。

先生が言うには、半年前位から住みつき、生徒にかみつく事もなく、可愛がられているとのこと。

明らかに、私たちと暮らしている時より元気そうな小次郎を見て、父はこちらで飼ってあげてくださいと言い、私たちは退散しました。

誰も、小次郎のことを話題にしませんでしたが、父の言う事は絶対で、連れて帰りたいと言えないことや、同級生にどう言って報告しようと思っていました。

私たちが、我が家に小次郎が来た頃の喜びのままで、もっと家族として可愛がっていたら違っていたかもしれません。
今でも思い出すと辛い思い出になります。