自分が幼少の頃、犬と猫が庭にいて、遊んだ記憶がありました。妻も子供時代に家で猫を飼っていたので、2人は見合い結婚でしたが、お互い猫好きだったので、親近感を感じました。

しかし不思議な事に家内が私と初めて会った日に、家内が可愛がっていた猫のミーが行方不明になって、それっきり家に帰ってこなくなったそうです。もしかすると家内が私と結婚して家を出るのを察知して家内と、お別れしたのかと思いました。

それから30年経ち、男の子供2人が成人して、家内も私も子育てを終えた解放感と、一抹の寂しさがありました。しかも私は地方に単身赴任しました。地方では犬や猫を飼う人が多く、毎年、春になると車のラジオから犬猫の里親募集の、お知らせが流れて来ます。

私は仕事で平日、車を運転することが多く、それまでは何気なく聞き流していたのが、単身赴任も10年目を迎えたせいか、そのお知らせが気になり休みの日に、動物管理センターに行くと庭の段ボール箱の中に、生後数週と思われる犬や猫が寿司詰めにされており思わず、幼少の頃のような気持ちの高ぶりを感じて気付いたら、1匹の黒白の虎猫を抱いていました。

生後数週と思われ、ミルクの飲み方も判らず、やむを得ずスポイトで買ってきたミルクを泣きながら嫌がるのを強引に口に流し込んで飲ませました。
しかし数日もすると母親猫から何も教えられていないのに自分でミルクを飲むようになったのは驚きでした。

休みの日には公園に連れて行くと、まだ視力が弱いのか数メートルも離れるとミャーと泣いて私を探す姿が愛おしくて父性本能を久しぶりにくすぐられました。

しかし、マンションでは猫を飼えないと判っていたので、数週後には飛行機に乗せて家内や子供の元へ連れて行きました。名前はレオとつけました。
家内も子供たちも喜び、日頃、会話の少なくなった親子に共通の話題が出来て家が明るくなりました。

一方、私は相変わらず、単身赴任で2週に1回、週末に自分の家に帰る生活でしたが、半年も経って、私が家に帰ると、レオが離れた場所から不思議そうな目付きをして私を見ているではありませんか。

家内から、「あら、レオちゃん、お父さんのこと、忘れちゃったの?。」と言われた時はショックでした。猫の恩知らずとは、よく言ったものです。まあ、猫だからしょうがいないと諦めました。

それから5年、私の単身赴任生活も終わり、レオが13歳のときに呼吸不全でなくなりました。猫ウイルス性気管炎などの3種混合ワクチンも打ち、ずっと屋内飼いをしていましたが、1度だけ開けた窓から、庭に飛び出して野良猫と接蝕したことがありました。

もしかすると、その時に猫エイズに感染したのかもと後悔しています。
しかし未だ眼も見えない内に母猫から引き離されたレオを家内は自分が母親だと言って可愛がりました。

寒い夜に、寝ている家内の頬を舐めて、目を覚まさせてから、家内と同じ布団にもぐり込んで来て、朝、家内が起きても、まるで子供のように、いつしか布団のど真ん中に遠慮もなく、堂々と寝ている姿が、とても愛おしかったそうです。

レオが動物病院で亡くなって数か月は家内の食欲がなくなるなどペットロス症候群になりましたが、子供も家から独立して今ではリビングルームにあるレオの写真が私たちを見守っています。