数年前の体験談です。夕食をすませて、一息ついていると庭のほうからか細い鳴き声が聞こえてきました。

はじめは何の声かわからず、不審に思い庭にでてみると塀の上には成猫が、地面にはまだ目も開いていない子猫が2匹倒れていました。

いま思えば、雄猫に襲われたのだと思いますが一匹はすでに息絶えていて、もう一匹も頭に怪我をしていました。

どうしたものかと少しためらいましたが、必死に鳴いている子猫を放っておけず、布にくるみ病院に連れていくことに。夜間のことで開いている動物病院を探し問い合わせをしたところ、治療後には飼い猫として迎えるかを聞かれたのです。

その時すでに家には1匹猫がいて、新たに猫を迎える予定はありませんでしたが、これも縁と思い「はい」と返事をし病院に向かいました。

その日は怪我の治療をし、帰宅。保護ということで料金は半額になるとのことでした。

その後は、日中に近所の動物病院でみてもらうことになり、ミルクをあげながら数日が過ぎました。成猫にかまれた傷のせいか、頭がかたむき目もよく見えていないようでしたが、けなげにがんばる姿に癒されたものです。

感染症をもっている可能性があったため、家にいる猫との接触はさけながらも、いずれ大きくなるだろう姿を想像しながらしばらくは穏やかに過ごしていました。

しかしながら、10日ほどがすぎた頃に異変が起きました。子猫は体をふるわせて、ミルクものまなくなってしましました。あわてて病院に駆け込んだところ、高熱がでているとのこと。

皮下注射などをしてもらい、一旦帰宅しミルクを少しのんで安心してましたが、しばらくすると呼吸がおかしく喉からは異音がしだしました。再度病院にいき、酸素室に。

苦しくてもがいている姿が、状況を知らなければ子猫が無邪気に遊んでいるようにもみえて、涙が止まりませんでした。

「家でみるのはむずかしいでしょうから」と病院が預かってくれることになり、子猫を置いて帰宅。あまりの急な展開に泣きつかれていたため、病院にまかせられるのはありがたかったです。

その後、病院から子猫が亡くなった電話を受けました。涙はその後もでましたが、もうあの子猫が苦しまなくていいと思うと、ゆっくり休んでね、という気持ちでもありました。

急変の原因は、成猫にかまれたことによる感染症の発症ではないかとのことでした。大人の雄猫は雌を発情させるためにその雌猫の子供を殺すことがあるそうで、あの子猫もその犠牲となった一匹だったのかもしれません。

鳴き声が聞こえたあの夜に塀の上にいた猫は、雄猫だったのか、あるいは母猫だったのかもと思うと、猫の習性とはいえ今も切ない気持ちになります。

子猫との生活はあっという間におわってしまいましたが、鳴き声の主を探しに庭にでたこと、子猫を保護して病院にいったこと、家に迎えようとおもったこと、どれも後悔はありません。

子猫の苦しみを長引かせてしまったのでは、と悩む気持ちもありますが、あの夜にもどったとしても、同じ選択をするだろうなと思っています。