アパートでウサギを飼っていました。たまにゲージから出して部屋の中を歩かせることもありましたが、なんと言ってもウサギです。

畳をツメで引っ掻いたり、柱の角をかじったりするものですから、なかなか出してやることができませんでした。ストレスが溜まるだろう、たまには屋外で遊ばせてやろう、ということになり、ウサギをゲージごと車へ。

近所の、古墳跡にある公園へ連れていきました。リードなどは付けようとも思いませんでした。家族3人で緩く周りを囲み、いざとなったら取り押さえればよいと考えたのです。

その甘さがいけなかったのです。初めて下ろされた草の上。嗅いだことのない緑の匂い。ウサギはしばらくじっと固まって、鼻をひくひくさせていました。

直後、突然興奮しだして、1メートル以上垂直にジャンプ。2、3回飛び上がったかと思うと、今度は猛ダッシュで走り出したのです。この間わずか1、2秒。私たちが声を掛け合う暇もありませんでした。

足元を風のようにすり抜け、林の中へと飛び込んでいってしまいました。まさに脱兎のごとしです。公園と言っても、見通しよく整備されているような都会の公園ではありません。

古墳のあった場所には樹木が生い茂り、小さい山のようになっています。父だけは、その茂みの奥までウサギを探していきましたが、とうとう見つかりませんでした。

暖房の効いた部屋で、固形の専用餌のみを食べて育った我が家の箱入り娘(ウサギ)が、野生の環境でどれくらい生きることができたのか、知るよしもありません。